バリアフリー法改正、参議院本会議で成立。
バリアフリー法の改正法が参議院本会議で成立。
インクルーシブ社会を実現するために活動されているDPI日本会議より声明が出されました。
【速報】
本日の参議院本会議にて、バリアフリー法改正法が成立しました!
今回の改正を期に、地方を含め日本全国のバリアフリー化が推進されるよう声明を出しました。是非ご覧ください。
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2020年5月13日
バリアフリー法改正法の成立に対するDPI日本会議声明
インクルーシブ社会の実現のためにさらなるバリアフリーの推進を!
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議 議長 平野みどり
私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国94の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。
5月13日に参議院本会議にて「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案 (以下、改正法)」が全会一致で可決成立した。2018年の改正に続き、東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、さらなるバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化を目指して法改正が行われた。
国会審議では与野党の国会議員のみなさんが、日本のバリアフリーの課題を真摯に受け止め、改善に向けて熱心にご議論くださった。今回の改正に関して、国会議員のみなさん、赤羽国土交通大臣をはじめとする国土交通省のみなさん、関係者各位へお礼を申し上げたい。
改正法の成立を期に、地方を含めた日本全国のバリアフリー化がさらに推進されるように、DPI日本会議として意見を表明する。
●インクルーシブ社会はインクルーシブ教育から 学校のバリアフリー整備の推進
今回の法改正で新たに盛り込まれた公立小中学校のバリアフリー整備義務化は、私たちは高く評価している。障害者権利条約はあらゆる年代でのインクルーシブ教育を求めており、その実現のためには一般の学校のバリアフリー整備は不可欠である。
さらに、多くの学校は災害時の避難所ともなるため、地域の公共施設としてもバリアフリー整備は重要である。1994年のハートビル法以来、四半世紀に渡って取り残されてきた課題だったが、今回、公立の小中学校のバリアフリー整備義務化が実現したことは、これからの日本を変える大きな前進だと考える。
ただし、新築時と大規模改修時しかバリアフリー整備の義務はないため、これだけでは実態としてバリアフリー整備が進まないのではないかと危惧している。国会審議で赤羽大臣は「小学校の時からユニバーサルデザインは当たり前だということを教える意味でも、学校をバリアフリー化するのは教育的効果がある。学校の耐震化工事と同じような形でバリアフリー化をしっかりと、政府の責任として進めたい。」と答弁された。ぜひとも、数値目標を設定し、整備計画を策定し、予算措置を講じて計画的に整備を推進していただきたい。
さらに、附帯決議には「インクルーシブ教育の推進及び災害時の避難所として利用する必要性から、設置主体の別、規模を問わず、高校、大学も含めた全ての学校施設のバリアフリー整備を推進すること」と盛り込まれた。これを踏まえて、公立の小中学校にとどまらず、高校、大学、私学を含めたすべての学校のバリアフリー化を推進していただきたい。
●小規模店舗のバリアフリー化
車椅子ユーザーが3人くらいでご飯を食べに行こうとすると、入れるお店はほとんどない。何を食べたいかでお店を選ぶのではなく、入れるお店に入るしかない。原因は、バリアフリー法では、床面積2000㎡以上の店舗しかバリアフリー整備義務がないためである。
国交省が2019年8月にまとめた「2000㎡未満の店舗・飲食店等のバリアフリー化の実態把握に関する調査結果」によると、300㎡未満の店舗が飲食店では80%、日用品販売店舗では92%、食堂又は喫茶店では96%と、ほとんどの店舗は2000㎡未満である。
にもかかわらず、2000㎡未満の店舗はバリアフリー義務がないため、新築でもバリアフリー化されているのは、飲食店で19%、日用品販売店舗15%、食堂又は喫茶店は9%しかない。新たにできる店舗なのに80%以上がバリアフリー化されていないのである。
さらに、2000㎡以上の店舗でも、店内のバリアフリー整備基準がないため、お店に入ると段差があったり、固定椅子しかなかったりと利用できないものが多い。2000年の交通バリアフリー法以降、日本の公共交通機関のバリアフリー整備は一定進んだのに、店舗に関しては全く改善されていない。取り残された最大の課題と言っていい。
国会審議でも多くの議員からこの問題が指摘され、附帯決議にも盛り込まれた。問題意識は共有されたが、改正法には効果的な整備施策は盛り込まれなかった。本年1月から「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準の改正に関する検討会及び小規模店舗WG」が立ち上がり、ガイドライン策定に向けて議論が始まった。バリアフリー化された店舗を着実に増やすように、規模に応じた整備基準を設け、目標を定めて整備を推進していただきたい。
●公共交通事業者に対するソフト基準適合義務化
DPIが昨年10月実施した「全国一斉行動!UDタクシー乗車運動」で、27%もの乗車拒否の実態が明らかになった。この課題についても、国会審議で複数の議員が質問し、国交省は、ドライバーのスロープ板の設置方法等の習熟を義務化するとし、新たに公共交通事業者に対するソフト基準適合義務化が盛り込まれた。
乗車拒否を無くすためには、定期的な研修は不可欠であり、ぜひとも事業者には積極的な取り組みをお願いしたい。ドライバー一人ひとりに対し、年複数回の研修を必ず実施していただきたい。さらに、メーカーには乗降が簡便な新たな車両の開発も求めたい。
●空港アクセスバス・長距離バス・定期観光バスのバリアフリー車両の導入促進
全国に1万台以上ある空港アクセスバス・長距離バス・定期観光バスのうち、バリアフリー化された車両は20台にも満たない。この問題は特に地方空港で深刻で、多くの地方空港は市内へのアクセスがタクシーとバスしかない。
飛行機には乗れるのに、バスに乗れないために航空機が利用できないという状態になっている。複数の議員が、普及が進まない原因となっている移動円滑化基準適用除外認定車両という仕組みから外すように求めた。
赤羽大臣は「新たな車両が開発されており、しっかり加速させていかなければいけないということで基準省令の適用除外をする方向で見直しを進めている。財政支援も講じている。しっかり措置をとっていきたい。障害者団体からの要望の強い地方空港に優先的に配置できるようにしていきたい」と積極的な答弁をされた。ぜひとも、全国でバリアフリー車両の普及促進を進めていただきたい。
●さらなる取り組みを!
上記の他にも様々な課題について議論され、衆議院の附帯決議は14項目、参議院の附帯決議は18項目盛り込まれた。いずれも重要な課題であり、盛り込まれた内容が実現することを期待する。
DPIとしては、本改正に実効性を持たせるよう基本方針作成などに取り組んでいくとともに、マスタープラン・基本構想・委任条例を活用した地域でのバリアフリー推進、並びに各自治体での学校のバリアフリー化計画の策定・実施を、加盟団体をはじめとする各地の仲間と進めていきたい。さらに、今後、障害者権利条約の国連審査で出される勧告を受けて、早期のバリアフリー再改正を実現し、積み残された課題の解決につなげていきたい。
DPI日本会議は、インクルーシブ社会を実現するために、全国の仲間とともに上記の課題に引き続き取り組んでいく決意をあらためて明らかにするものである。
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